2人の王女と2人の騎士
「あら?お母様の言いつけが守れていないようね」
ハッとして振り向くといつの間にかお母様が立っていた。こんなに早く戻ってくるとは思わなくて驚くのと同時に、冷たい笑顔で見つめられ、鼓動が速くなるのが分かる。
「ご、ごめんなさい。今すぐ帰らせますから…」
そう言ってセラに帰るよう促す。
しかし彼女は私に見向きもしないでスッと立ち上がると、お母様の目の前に立ちはだかった。
「勝手に来てしまった事は謝ります。申し訳ありません。…ただ、1つだけお願いがあります。クライドとの事、認めてほしいのです」
自分の事のように頭まで下げて、真剣な表情をしていた。
私のためにそこまでするなんて…。
「あなたにお願いされたって無駄よ。この子は王子と結婚させるのだから」
「でもティアはそれを望んでいないと思います。ティアの気持ちも考えてあげて下さい」
「そんな事言われる筋合いはないわ!大体あなた、レイスフォールの王子との縁談が破談されたみたいじゃない。陛下の命令に逆らうなんて、なんて神経しているのかしら」
「そうだったのセラ…」
セラは唇を噛み締めたまま俯いていた。
そんな事になっていたなんて全然知らなかった。離宮に来てからは周りの出来事が耳に入って来ないから…。
「全く…正妃の娘だからといって甘やかされすぎではなくて?陛下にもちやほやされて、兄は次期国王で…あなたこそティアルーシェの気持ちを考えた事はあるのかしら?ずけずけとこの子の心に入り込んできて、いつも苦しい思いをしてきたのよ?」
「そんな…私はただ…」