2人の王女と2人の騎士
「お母様やめて!」
自分でも驚く程大きな声が出た。
これ以上、セラを責めるような事は聞きたくない。
「…ごめんなさい。セラ、今日は帰ってもらえないかしら…」
「でも、私…!」
「お願い、帰って!」
「…っ分かったわ」
強い口調で言ったからか、セラはその後何も言わずに離宮から出て行った。
「偉いわねティアルーシェ。昔から私の言う通りにすればこんな事にならずに済んだのに」
やれやれとため息をつきながら私の側を離れ、屋敷へと戻って行く。
「…っ」
セラが帰って行った方向を振り返ると、もう姿は見えなかった。
私の頬に流れる涙はセラに対する罪悪感からなのか、この生活の苦しさなのか分からない。
セラのように自由に自分の気持ちで行動出来たらどんなに幸せか…。
でもお母様の気持ちも分からなくはない。どんな思いで私を育ててくれたのか、それを思うとお母様の期待に応えたいとも思う。
「私が…したい事は…」
様々な思いが巡る中、自分が本当にしたい事が何なのか分からなくなってしまいそうだ。
でもこれだけははっきりと浮かんでくる。
バラ園で私に思いを伝えてくれたあのクライドの姿が…。