2人の王女と2人の騎士
side セラフィーナ
あれからティアには会えていない。
というか会いに行けないでいる。
あんなに強い口調で私を遠ざけたのは、あの時が初めてかもしれない。
「ティアの気持ち…か」
ローズマリー様に言われた言葉が頭から離れないでいる。
ティアはいつも穏やかで優しくて…。
でも本当は私の事を嫌っているのかもしれない。普段表情に出さないだけで、知らず知らずのうちにティアを傷つけてしまっていた…?
「はぁ…」
今日何度目かも分からないため息をついた。
「セラフィーナねえさま?」
たどたどしい言葉で、心配そうに私の顔を覗き込むのは甥っ子のレオだ。
「おいで、レオ」
こんな小さな子どもにまで心配をかけたくなくて、笑顔でレオを抱っこする。
笑いかけるとキャッキャとはしゃいでいて、さっきの不安そうな表情はなくなったみたいだ。
「ふふ。レオはセラフィーナ姫が大好きなんですよ」
そう言って兄様のお嫁さん、エリナ義姉様が微笑みながら近づいてくる。
私が今いるのは正妃の家族が暮らす宮。
ローズマリー様が暮らす離宮より城に近いけど、庭園はそれほど広くはない。
その代わり屋敷内はたくさんの部屋があり、大きい造りだ。
「レオ、今度はおばあ様のところにおいで」
屋敷内から出てきた母様と兄様。
母様は両手を広げてレオの目線にしゃがみ込んだ。
「おばあさま〜!」
レオは一目散に走り、母様に抱っこされるとまたキャッキャとはしゃいでいた。
レオは将来ファルサリアの国王。
産まれた時王子だと分かると、母様がとても喜んでいたのを思い出す。
そう…正妃から産まれた子は次期国王、その子から産まれた子も王子。私の家系は模範的過ぎる程安泰している。
普通はこんな家族の一員だったら胸を張っていれるけど、私は素直に喜べないでいた。
「もしかしてティアはずっとこの事を…?」
ローズマリー様に言われ続けていたのかもしれない。でもティア自身は王族との結婚には興味がない。そうなると2人の意見が分かれてしまうけど、かと言って私が口出し出来る事ではない。
あの時、安易に離宮へ足を運んでしまったのを後悔した。
ティアに余計な事をしてしまったと…。