2人の王女と2人の騎士
side ティアルーシェ
今日も離宮の中で変わらない日常が始まろうとしていた。
朝起きて身支度を整え、朝食をとると、庭園に出て朝の空気を吸う。涼やかな朝の空気は思い切り吸い込むと心が落ち着く。
お母様もそれが好きなようで、先に外へ出たお母様を追うように扉を開けた。
しかしお母様は私に背を向け、呆然と立ち尽くしている。
「具合でも悪いのですか?でしたら少し横に…」
どうしたのだろうかと近寄って声をかけた。
するとお母様の向かい側に、思いがけない来訪者がいた。
「クライド…」
私に気づいて彼は頭を下げた。
私がここへ来てから訪ねてくるのは初めての事だ。
お母様は相変わらず青ざめた顔をしている。
「一体どうしたのですか?」
「戦争が…始まるかもしれないと…」
問いかけると少し間を置いて、お母様らしくない細々とした声でそう言った。
私も驚きで言葉が出ない。
戦争が起こる気配なんてあっただろうか。
「そんな状況な上、クライドはとんでもない事を言うのよ…」
とんでもない事…。
クライドは何と言ったのか気になり、彼に視線を向けると目が合う。すると私とお母様の目をしっかりと見て口を開いた。