2人の王女と2人の騎士
「では、改めてもう1度申し上げます。…私はこの戦争が始まるかもしれないという状況だからこそ、ファルサリアに明るい話題を広めるためにも、ティアルーシェ姫と結婚させていただきたいと思っております」
彼のはっきりとした声が離宮に響いている。
私がここにいる間もこうして思ってくれていたと思うと胸が熱くなるようだ。
「既に陛下には許しを得ております。どうか、ローズマリー様…許しをいただけないでしょうか…?」
そう言ってクライドは地面に膝をつき、土下座をしだした。私は彼に止めさせようと慌てて近寄ろうとしたが、お母様が手を出して行く手を阻む。
頭を下げ続けるクライドをしばらく睨むように見つめていた。
どのくらい時間が経ったか…
そう思える程長い沈黙の後、お母様の手がゆっくりと下ろされる。
「…そう。悪者は私って事ね。あなたといい、セラフィーナ姫といい、必死にこの子を助けようとしている。その根性だけは素直に認めてあげるわ。…クライド、あなたが王族であれば大喜びで承諾したのに」
「お母様…」
正直、もうだめだと思っていた。
離宮に来た頃は絶対にお母様を説得してみせると意気込んでいたけれど、何度言ってもだめ。
クライドがこうして土下座をしてまでお願いしても、お母様の心には響かないのだろうか。
もう…諦めるしかないのか…。