2人の王女と2人の騎士
side セラフィーナ
翌朝、ティアが離宮を出て部屋に戻ったと侍女から聞いた。
クライドの事はどうなったのだろうか。
ローズマリー様とは…。
そんな事を考えながら自然とティアの部屋に足が向かっていた。
でもティアはまだ私を嫌っているかもしれない。私から押しかけたら迷惑だ…そう思ったら足が止まった。
長い廊下の突き当たりを曲がったらもうティアの部屋に着くのに…。
廊下の真ん中で棒立ちしながらながめていると、こちらに向かって来る人影が見えた。
細くてスラッとしたシルエットに、さらさらの黒髪が揺れる…。
「…久しぶりね。丁度セラの部屋に行こうと思っていたの」
立ち止まったままの私のところへ真っ直ぐに向かって来たティア。
小さく微笑むティアに対して私はどんな顔を向けたら良いか分からず、思わず目線を逸らしてしまった。
「私…セラに謝りたくて…。酷い事を言ってしまって、ごめんなさい」
丁寧に腰を折って謝る姿に驚いた。
ティアではなくて、私が謝らなければいけない立場なのに。
「それからクライドとの事、認めていただいたわ。お母様とも仲直り出来たの。セラのおかげよ」
「私は…何もしてない。ティアに迷惑かけただけよ」
「いいえ。セラの言葉がお母様の心を動かしてくれたと思うわ。本当に、ありがとう」
そう言うティアの顔は晴れ晴れとしていて、スッキリしたような表情をしていた。
「そう…だったら嬉しいわ」
ティアに嫌われていたなんて私の思い違いだったらしい。
だって、以前と同じような優しい微笑みで笑いかけてくれるから…。
「私ってバカね」
「…?何か言った?」
「ううん。それよりおめでとう、ティア」
「ええ、ありがとうセラ…!」
私の力なんて微々たるもの…。
ティア自身の力で幸せを掴み取れたのだと思う。
ティアとクライド…この2人の幼なじみの幸せを心から祝福しよう。
そう思い、ティアの目を見つめて微笑んだ。