2人の王女と2人の騎士
戦争が始まるかもしれない。
この話はじわりじわりとファルサリア中に広がっていた。人々が不安な日々を過ごす中、ファルサリア王女と騎士団長の結婚は、暗闇を照らす一筋の光のような明るい話題として国中を沸かせた。
婚約が決まってから着々と準備が進み、一月後には結婚式を控えている。
ティアは毎日幸せそうに過ごしていた。
こんなにも楽しそうな姿を見るのは初めてかもしれない。
温かい陽だまりの中、私たち4人もティアとクライドの話で持ちきりだった。
「まさかクライドから離宮に乗り込むなんてね。しかもそれをイグニスが後押ししてたなんて」
あの策士クライドが正攻法で離宮に行くとは考えられなかったが、イグニスの意見なら納得がいく。
「姫、乗り込むなんて人聞きの悪い事を言わないで下さい」
「でもそうじゃない。囚われの王女を騎士様が助けるなんて…ロマンチックね」
幼い頃読んだおとぎ話のような出来事が、実際に身近で起こっていたなんて…思わずうっとりしてしまった。
「いつまで経ってもウジウジしてたからな。俺に感謝しろよ!」
得意げな顔でイグニスがクライドの肩を叩く。こんな時、いつもならしかめっ面で手を払いのけるのだけど、今日は違った。
「…今回ばかりはイグニスのおかげだ。素直に感謝する」
「え?お、おう…」
いつも違う様子のクライドに、逆にイグニスの方が調子が狂ったようだった。
「本当にそう。私たちはセラとイグニスに助けられたわ。結婚しても、何があっても、幼なじみだって事は変わらない。これからも変わらずよろしくね」
ティアの言葉に私とイグニスは頷く。
ティアとクライドは幼なじみから夫婦に、家族になる。幼い頃から過ごしてきた私からすると、まるで親心のように見守っていたいという温かい気持ちになるのだった。