2人の王女と2人の騎士
それから月日が経つにつれて、ティアへの恋心は段々と大きくなっていった。
しかし俺のような者が一国の王女を好きになって良いはずがない。いくら幼なじみとはいえ、将来はどこかの国の王子と結婚し、妃となる高貴なお方。
この気持ちはどうにかして消してしまわないといけない。
そのために俺は騎士団長として仕事に打ち込み、セラの教師をしたりと気を紛らわしていたのだ。
しかしそんな中、イグニスによって衝撃的な事実を突きつけられる。
「セラは…お前の事が好きだったんだよ!」
「…まさか…」
「まさかじゃねぇ!セラはな、お前がティアの事が好きだと分かると自ら身を引いたんだ。本当は言うなと言われていたけど、あえて言う。これじゃあセラが報われないからな」
イグニスが怒鳴りつけるように声を荒らげたのが、今は分かる気がする。
俺はティアの事が好きなように、
セラは俺が好きだった。
同じ気持ちだったのだ。
俺はティアへの思いを次第に大きくさせているところで、セラは思いを断ち切った。
ずっと子どもだと思っていたが、この時始めてセラの事を尊敬し、立派な大人に見えたのだ。
が、同時に申し訳なく思った。
セラの思いに応えられないし、何よりその思いに気づく事さえ出来なかった。
不甲斐ない人間だ。