2人の王女と2人の騎士
アレン王子が去り、残された私たちは緊張感がなくなったかのように重い息をついた。
「…こう来るとは」
「陛下…!セラは…セラフィーナ姫は何も悪くないのです!」
イグニスが父様の前で私を庇うように言った。
「分かっておる。しかしこれで意見すれば更にこちらの状況が悪くなるだけだ。…セラフィーナ」
「はい…」
父様の目が何を言っているのか理解出来る。
理解したくなくても分かってしまうのは、王女としての自覚があるからなのか…それとも父様の娘として育ってきたからなのか。
「アレン王子に嫁ぎなさい」
実際にそう言われると、すぐに〝はい〟と頷けなかった。
私がアレン王子と結婚すればファルサリアは守れる。関係のない人を巻き込まずに済む。
それで全てが解決するのに…。
俯いたままの私を庇うかのように兄様が口を開いた。
「父上、急な話でセラフィーナも動揺していると思います。少し考える時間を与えては?」
「それもそうだな。では1週間待つ。それまでに考えておきなさい。…王女としてこの国を背負っているのだと忘れないように」
そう言って父様は部屋を出て行った。
続くようにぞろぞろと重鎮たちも部屋を後にする。去り際に私に向かって礼をする表情は哀れみを向けているような気がした。
「セラ…」
イグニスが心配そうに私を見つめている。
黙りこくる私は絶望的な表情をしているのだろうか。
だって、父様も重鎮たちも…
嫁ぐ以外ないと釘を刺すようだったから。
父様は父様だけど、普通の父親ではない。
王という立場、国を担っている方。
娘の幸せだけを考えてはいけないのは分かっているつもりだった。
けれど…嘘でもいいから、私を守ってくれるような言葉を言ってほしかった…。
そんな事を思うのはいけない事だろうか。
贅沢…だよね…。
「セラフィーナ…行こう」
肩を落とす私を兄様が支えてくれ、イグニスとクライドと共に部屋を出るのであった。