2人の王女と2人の騎士
16年前────
俺が4才の時。
ティアは1才で物心ついていない頃、そしてセラはまだジュリア様の中にいてそろそろ産まれるといった頃だった。
夜の空気が肌寒くなる秋風吹く中、城の正門で男の赤ん坊が捨てられていた。
それがイグニス。
おくるみに包まれて側には名前と誕生日が書かれたカードが置いてあった。
丁寧に書かれたカードを見て、親はどうしても育てられない状況にあったのだろうと考えたセラの母親、ジュリア様は自分の子として育てようとしていた。
しかし王家の子として育てるという事は、イグニスに王子の身分が与えられる。
それでは血筋が穢れてしまう。
様々な問題も出てくる。
そんな事から、その頃子どもがいなかったバートレット夫妻がイグニスを引き取り、自分たちの息子、長男として育てられた。
このような経緯があるので、イグニスは正式なバートレット家の人間ではないのだ。
それから父上はバートレット家の血筋が穢れたと、毎日のように話していたのを思い出す。
俺も昔は従順な子どもだった。
父上の言う事をそのまま信じ、イグニスを常に下に見て接していた。でも彼は飄々とした性格だ。そんな事を気にも留めていない。その様子を見て俺は1人でイライラしていた。
月日が経ち、初めは疎まれていたイグニスだったが、いつの間にか彼の周りにはいつも人が寄っていた。
持ち前の明るさと人柄が認められていたという事なのだろう。
その光景を見て、俺も次第にイグニスと対等に接するようになった。
自分の勝手な思い込みで、イグニスの良さを理解出来ていなかった頃を悔やんだりもした。
同時に父上に反抗する事も増えたが、イグニスが第2騎士団長になり、周囲に実力が認められ始めて来たところで父上にも認めてほしいと願う自分がいたのだ。
いつもは悪態をつく事も多い。しかし本当は彼を信頼し、大切な友人であるとは面と向かって言えないが。