2人の王女と2人の騎士
side イグニス
あっという間に1週間が経って武闘大会当日。
そしてセラが…答えを決める日だ。
大会の準備もあり、忙しくてなかなかセラの顔をまともに見る事なくこの日を迎えてしまった。
「クライド、俺少し空けるわ」
「どこに行くんだ?もうすぐ出発するぞ」
「すぐ戻るって!」
「あ、おい!待てイグニス!」
俺はクライドの言葉を無視して訓練場を出て、向かうのはセラの部屋。
彼女がどのような決断を出しても、俺は1つだけ伝えたい事があった。
…なんて、既にセラの考えが分かっているような心持ちなんだけど。
「イ、イグニス様!?」
部屋の前につくと控えていた侍女が驚いた声を上げた。
「突然申し訳ない。セラは…」
「イグニス…?いるのね?」
侍女の返事を聞く前にセラが部屋の中から声を出した。すると中にいた侍女が出てきて、代わるように俺は部屋に入る。
気を遣わせてくれたのか彼女たちは俺に一礼すると、そっと部屋から離れていった。
セラの部屋は、男勝りな性格な割に女の子らしい雰囲気がある。フリルがあしらわれていたり、花柄があったりと可愛らしいものが好むようだ。
そんな彼女は普段より着飾ったドレスを着ていた。
ポニーテールにしていた髪はハーフアップにされて軽くアレンジされている。
「黙っていればおしとやかな王女だな」
「それ、前にも聞いたんですけど?」
そういえば舞踏会の時にも同じ言葉を言った気がする。苦笑いを浮かべるセラだったけど、本気で怒っていないところは俺たちの間柄があるからだろう。
でも今日はからかうために来た訳でない。
俺は緊張感を紛らわすかのように咳払いをするとセラの瞳を真っ直ぐ見つめた。
「イグニス…?」
急に真剣な顔をするものだからか困惑した表情をしていた。しかし雰囲気が変わったのが分かったのか、セラも黙って俺を見つめる。