2人の王女と2人の騎士


セラの前では緊張なんてしないはずなのに、言いたい事が頭の中にちゃんとあるのに、中々出てこない。




「…ねぇイグニス…?」




「お、俺は!…お前が…」




「…?」




いろいろと考え込んでいたところで、不意にセラが俺の袖口を掴む。
弾かれたように声が出て、そのおかげで覚悟を決め、握り拳に力が入る。








「セラが好きだ」








こんな一言にこんなに渋るなんて俺らしくない。

だけどはっきりと言い切った。

セラは信じられないという面持ちで俺を見つめていた。




「俺の気持ちは伝えておきたくて…」


セラがクライドの事を諦めてから俺の事をどう思っているのかは分からないが、これで心残りはない。




「…ありがとう。あのね、私…」




セラが口を開いた時、丁度部屋の扉が開いた。



「お話中申し訳ございません。そろそろ時間ですのでお2人ともお支度を…」

「分かった。すぐに行こう」


遅くなるとクライドが怒り出すだろう。
気持ちはしっかりと伝えたし、俺自身も一区切りついた。

すっきりしたところでセラに背を向けて行こうとすると、引き止めるように腕を掴まれる。




「武闘大会が終わったら私のところに来て。…それと、頑張って。応援してるわ」

「ああ分かった。ありがとう」


笑顔で答えると、俺はクライドたちが待つ訓練場から会場である闘技場へと向かった。

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