2人の王女と2人の騎士


そう言ったところで一瞬、強風が吹く。

冷たい風が肌をなぞるので、腕を擦りながら侍女の方を振り返ると…目を疑うような光景が広がっていた。





「これは…!」



武装した数人の男たちが侍女を捕らえている。
よく見ると鎧には見た事のある紋章が刻まれていた。



…そう、レイスフォールの国章が。




「お逃げ下さい!姫さ…っ」


ただならぬ雰囲気を感じた侍女は私に向かってそう言いながら、腹部に衝撃を受けて意識を失い倒れてしまった。




「あなたたち何て事を…!」




無抵抗な侍女に危害を加えるなんて怒りが込み上げてくるけど、反撃しようにも武器を持っていない。丸腰の中この状況をどう切り抜けようか考えていると、男たちの間から不気味な笑みを浮かべた人物がやって来る。



「お久しぶりです、セラフィーナ姫」



丁寧な仕草で礼をする彼は、アレン王子だった。




「これは一体どういう事ですか」


彼に向けたことのない鋭い目つきで睨みつけるが、アレン王子は気にも留めていないようだ。
それどころか先程より口角が上がっているかのように見える。



「私が直々にあなたをお迎えに参りました。…ああ彼女は無事です。騒ぎを起こされたら大変ですので少し眠ってもらいました」

「そのような手荒な真似をしなくとも、私はあなたの元へ嫁ぐと決めていました。それに約束の期限までまだ時間は残っているはず」




…私はそう決断したのだ。

これで何もかも解決する。
ファルサリアを守れると思って覚悟したのに、この仕打ちだ。

横暴にも程がある。

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