2人の王女と2人の騎士
「あぁ…その話は最初からありません」
「何を言っているのですか!?取引をしたではありませんか!」
軽々と言ってのける彼が信じられなく、頭が真っ白になる。
「嘘…です。あなたはまんまと罠にはまったのですよ」
「何て事を…!」
怒りで肩が震え、涙が浮かんでくる。
ここまで卑怯な人だとは思わなかった。
そんな自分にも腹が立つし、何より目の前で声を上げて笑うアレン王子が憎らしくも感じる。
自分の策にはまって喜んでいるのか、私が悔しがる様子を見て嘲笑っているのかは分からないけど、その笑みは不快な気分にさせる。
「さあ、お話はここまでだ。姫を捕らえよ」
アレン王子の一声で男たちが私に向かって襲いかかる。私は自慢の運動神経を活かして何とか攻撃をかわした。
どうにかして助けを呼べないかと思ったけど、大声を出しても近くには人がいない。それに侍女を置いてここから離れる訳にはいかない。
そんな事を考えているとアレン王子が侍女の首筋に刃を当てている姿が見えた。
「大人しくしていただかないと、この人が傷つく事になりますよ?」
アレン王子の言葉に私の動きが止まる。
男たちはその一瞬を見逃さなかった。
数人がかりで手足を拘束され、懸命に身じろぎするけどびくともしない。
そして布で口を覆われてしまうと急に視界が歪む。
睡眠薬か何かだと察したところで、私の意識は段々遠のいていくのだった。