2人の王女と2人の騎士
side イグニス
武闘大会は思ったよりも強敵ばかりで苦戦しつつあった。
特に騎士団以外にも屈強なやつらがいる事に驚く一方、そんな強い相手と戦える事にわくわくしていた。
でもファルサリアの第2騎士団長として負けるなんてヘマはしたくない。
そんな思いでようやく月の騎士団長サマ、クライドと戦えるところまできた。
「いよいよクライド団長との勝負ですね」
「俺、イグニス団長が勝利すると信じています!」
俺の団員たちが口々に応援してくれる。
「皆…ありがとな」
団長として皆の期待に応えたい。
それに、俺だってクライドに勝ちたい。
ずっと負けてばかりの俺だけど、もう昔の俺ではない事を証明したいんだ。
それに…セラが見ている前でクライドに勝って、強くなったって見せつけてやりたい。
「…それにしても遅いですね。休憩時間はとっくに過ぎているのに」
試合開始の放送が入るはずなのに中々始まらない。
どうしたのかと考えていると、控え室のドアが勢い良く開かれた。
すると息を切らしながら慌てた様子のクライドが立っていた。
「イグニス!武闘大会は中止だ」
「どういう事だ?」
「…セラフィーナ姫が…攫われた」
「なっ…!」
どうしてそんな事が…?
一体誰が…?
「城で会議がある。すぐに戻れ」
それだけ伝えるとクライドは足早に控え室を去って行った。
セラと親しみのある団員たちも驚きを隠せないようで、動揺しているようだ。
嫌な汗が背中を伝う…。
セラの無事を祈りながら、クライドに続くように俺は控え室を飛び出した。