2人の王女と2人の騎士
城に戻るとすぐに緊急会議が行われた。
「セラフィーナを攫ったのは、どうやらレイスフォールのようです」
ベルナール王子が口を開くと、部屋にどよめきが起こる。
俺も一瞬驚いたが、やはりなと心の中で思っていた。あの王子がいかにもやりそうな事だ。
「そんなまさか…」
「残念ながら事実です父上。セラフィーナに付き添っていた侍女が証言しています」
「では…アレン王子の仕業だと?」
「ええ、恐らく。どうしますか父上?」
陛下はしばらく難しい顔をして考え込んでいた。
自分の娘と国…
どちらを取るか天秤にかけているのか…。
皆が陛下の言葉を待ち、部屋がしんと静まり返る。
どのくらい経ったか、陛下は絞り出すような声でこう言った。
「戦争は免れないか…」
俺はその言葉を待っていたのかもしれない。
娘を、セラを取ったという事なのだから。
「陛下、ではすぐに部隊を構成してレイスフォールへ向かいます」
早くセラを助けたいという思いしかなかった。
今頃アレン王子に何をされているか…考えたくもない。
「待てイグニス。兵の数で言えば真っ向から攻めるのは不利だ」
クライドが冷静に引き止める。
「じゃあどうすれば…!」
その時、タイミング良く会議室の扉が開いた。
「突然申し訳ありません。今の話、聞きましたわ」
現れたのはティアの母親、ローズマリー様だった。急な訪問に重鎮たちが驚き、慌てて頭を下げていた。
「皆さん顔を上げて。話を聞いて、私から提案があるのです」
「提案…とは?」
陛下の眉がピクッと上がり、真剣な表情でローズマリー様を見つめていた。
「私の故郷…ワイアットから兵を送れるよう頼んでみますわ」
「それは誠か?」
「ええ、陛下。私もセラフィーナ姫を助けたいと思っておりますから」
ローズマリー様はファルサリアの北にある国、ワイアット王国の王女だった方。
協力が得られればとても心強い。
陛下はローズマリー様を見つめて1つ頷くと、会議室を見回す。
「…さて、取引を無視して我が娘である王女を攫った事、断じて許されない。直ちに準備に取りかかり、レイスフォールへ向かう軍、国の守備にあたる軍を編成する!」
「「はっ陛下」」
陛下の言葉に全員が頷いた。
これでセラを助けに行ける。
それまでどうか…どうか無事でいてほしいと願うのだった。