2人の王女と2人の騎士
side ティアルーシェ
城に戻ってもやっぱりセラの姿はなかった。
何かの間違いじゃないかと疑ったけれど、城内が慌ただしい雰囲気を見て攫われたのは本当なんだと感じられた。
何事もなくいつもの明るい笑顔で私の部屋を訪ねて来てくれるのではないか…。
そう願ってやまない。
日が段々と傾いてくる────
窓を開けると冷たい風が部屋に流れ込んできた。こんな寒空の中セラはどんな状況にいるのだろうか…。
…そういえばセラを攫ったのはアレン王子だと兵が話していたのを聞いた。
アレン王子はセラを妃にしたがっていた。
そうなると、酷い仕打ちは受けていないはずだと思う。
レイスフォールがある方角の山々を見つめそんな事を考えていると、視界の下に松明の明かりと装備を整えたたくさんの兵の姿が見えた。
もしかすると…今からレイスフォールへ向かう軍なのではないか。
クライドとイグニスがいる…?
そう思った私は部屋を出て2人の元に向かおうとするが、扉を開けた瞬間、警備の兵に止められてしまった。
「姫様、今部屋を出ては危険です。お戻り下さい」
「私は正門に行きたいのです。通して」
「なりません。陛下の命令ですので」
「…では、あなたたちが付いてきて。それなら良いでしょう?ほら、早く」
「ひ、姫様!お待ち下さい!」
こんな所で揉めていてはクライドとイグニスがもう出発してしまうかもしれない。
私は兵の言葉になんて聞く耳持たず、ドレスの裾がひるがえるのも気にせずに正門へ急いだ。