2人の王女と2人の騎士
正門に着くとクライドたちはまだそこにいた。
「クライド!イグニス!」
私の声に気づいた2人は驚いた様子で見ていた。
「どうしてここに!セラフィーナ姫が攫われて危険な状態だというのに」
「クライド…ごめんなさい。でも私に何も言わずに城を出ようとするのはあんまりじゃないかしら?」
戦をしてくるという事は、命を落としかねない。そんな事は想像したくないけれど、せめてお見送りくらいしたっていいじゃない。
「…そうですね。でも俺は国境付近に行くのでファルサリアから出る事はないですよ。…でもイグニスは…」
レイスフォールへ向かうのね。
セラを助けるために。
「イグニス…」
「何だよ心配すんなって。必ずセラを救い出して、ファルサリアに帰ってくる」
こんな時でさえ明るく気丈に振る舞う彼がとても頼もしく見える。そんなところはどっかの誰かさんとそっくり。
「…私は見ての通り力なんてないし、大好きな妹が大変な目に合っているのに何も出来ないのが心苦しいわ。だからお願い…」
イグニスにしかセラを託せない。
私の思いも…。
「セラを…頼みます」
「ああ。任せろ」
イグニスは私の目を見てしっかりと頷くと、馬にまたがる。
「…では、行って参ります」
「ええ…。どうかご無事で…」
別れ際にクライドと言葉を交わす。
そして馬にまたがった騎士団は暗闇の中を疾風の如く駆けて行った。
「姫様…」
「分かってるわ。戻ります」
私はその姿が見えなくなるまで見つめてセラ、クライド、イグニスの無事を祈り続けると城の中へ戻った。