2人の王女と2人の騎士
「心配なら私が毒味しましょう」
そう言ってスープを一口口に含み、パンも小さくちぎって口に入れた。
王子が自らそんな事をするなんて…。
私が死なれたら困るから…?
「ほら、大丈夫です。私は確かに強引に姫を攫いましたが、未来の花嫁を傷つける事はしませんから」
安心させようとしているけど、そう言われても食欲は出てこない。それにこんな状況で食事を取れる程図太い神経はしていない。
いつまでも手をつけない様子を見かねて、アレン王子はテーブルに食事を置いた。
「冷めないうちに召し上がって下さい。明日の朝、迎えに来ます」
そう言うと静かに扉を閉めて出て行く。
良かった…やっと1人になれる。
大きく息をつくとベッドに寝転んだ。
扉の前には監視がいるだろうけど、自分だけの空間にいるからか少し警戒心が緩み、不意にファルサリアの皆の事が頭をよぎる。
「今頃…どうしてるかな」
ティアとは今日1回も話せていない。
クライドも遠目でしか見ていない。
父様、母様、兄様…皆…。
「イグニス…」
城では皆慌てふためいているだろうか。
早く帰りたい。
ファルサリアに、イグニスのところに。
まだ1日も経っていないというのに、しばらく会えていないような感覚に陥ったのだった。