2人の王女と2人の騎士
「私はあなたに従っています。逃げてもいません。なのにファルサリアを攻めるなんて…」
この人はどこまで冷酷な人なのだろう。
「前にも言ったでしょう。欲しいものは力尽くでも手に入れると。姫を手に入れるためなら何でもしますよ」
「どうしてそこまで私にこだわるのですか…。私より相応しい方はたくさんいると思います」
そうよ…。
私なんかよりレイスフォールという大国の王妃に相応しい人なんて、王族にも貴族にもいるはず。こんな男勝りの身分だけの姫を選ぶなんて不思議でならなかった。
前からずっと思っていた唯一の疑問…。
「セラフィーナ姫、あなたはファルサリアの正妃の娘である正統な血筋を持つ完璧な生まれと、何より愛らしくも強さを兼ね備えている方。それだけ立派な理由がある以外何がありましょうか。レイスフォールの王太子の相手として1番相応しい。それにあなたはファルサリアでくすぶったままでいては勿体ない」
ベタベタに褒めちぎられてもこれっぽっちも嬉しくない。
それに…
「くすぶったままとはどういう事ですか?」
「聞くところによると姫は剣をたしなむようですね?レイスフォールでは思う存分自由にして構いません。ここは強さがものを言う国です。女性の兵もいますし、私の母親も剣の腕前は相当なものだったようです。ですからあなたのような王女が私の妃となれば、強い王妃が誕生したと皆喜ぶ事でしょう」
驚いた…。
レイスフォールでは女性も剣を持つのが受け入れられているなんて。
広大な領土を持つ国は女性の軍事力も活かしているという事なのか…。
だからと言って私はレイスフォールの王妃になんかならない。
そうやって巧みに私の気持ちを誘導しているに違いない。そんな事を言われても、ファルサリアの皆を傷つけた事実は変わらないし、許せない。
「…話しすぎましたね。もうこんなに日が高くなっている。すぐに出発しましょう」
にこやかに微笑むけど私の手は昨日と同じく紐で結ばれ、馬車に乗せられ出発するのだった。