2人の王女と2人の騎士
そうと決まれば夜明け前までに国境を抜けなければいけない。暗闇に紛れて息を潜めて進むのはとても神経を使うし、だからと言ってゆっくり進めば日が昇ってきてしまう。
失敗は絶対に許されないと緊張感を高めていると、クライドに肩を叩かれた。
「イグニス、国境を抜けたらすぐに王都へ迎え。出来れば王都に着く前に助け出せたら良いのだが、そうはいかないだろう。ワイアット軍と合流したらそちらにも軍を送るから、それまでは慎重にな」
「ああ。そうする」
道中レイスフォール軍が待ち受けているだろう。クライドたちのように、俺たちの兵の数も少ないから暴れ回るのはワイアットが来てからという事か。
「それと…これを書き写していけ」
手渡されたのは1枚の紙切れと真っ白な小さな用紙、そしてペン。
紙切れの方には何やら記号のような羅列が書かれている。
でもこれ、どっかで見た事あるような…。
「ファルサリアの古代文字で書かれている。もしもの時に使え」
「何て書いてあるんだ?」
「それはセラフィーナ姫が分かるだろう」
「何だよそれ。変な事書いてないだろうな?」
「こんな時にふざけるやつがいるか」
すごく気になったけど言われた通り用紙に書き写す。
というか何でわざわざ俺が書かないといけないんだよ…。
「何で書き写さないといけないのかという顔をしているな」
うわ、こいつ怖…。
「お前が手書きした方が嬉しいのかと思ってな」
「…何でそれを」
「さあな?」
クライドには絶対分からないと思っていたのに、ティアとの事で感覚が鋭くなったか?
こいつにセラとの事でとやかく言われたくなかったけど、まあいずれ知られる事だからな。
仕方ない…。
そんな事を思いながら出発の準備をするのだった。