彼女と五月とサングラス
何故あの芸能人が人気が有るのかとか蕎麦を上手くすすれないとかくだらない事が多かったが、彼女はクラシックギターの名手だったがロックンロールが好きな為に音楽に関しては辛辣だった。
クラシックギターの有名な世界大会まで行って優勝は逃して居たが入賞していた。
その時にレコード会社にスカウトされたが、断っていた。
それは、自分自身がロックンロールが好きなのとレコード会社が何故自分に来たのか分かっていたからだ。
クラシックの世界もルックスが良ければ、やはり商売になる事を知っていたのも嫌だったようだ。
彼女は、一時期パニック障害と鬱の為に仕事を休んだが経済的に家柄が良く仕事をしなくても良い状態だった。
元貴族の家でかなりのお金持ちだったが、本人はそれで幸せになれると思っては無かった。
彼女は、パニック障害と鬱が少し治るとエステのお店の事務とクラシックギターの先生をまたやり始めた。
僕は、経済的に不自由しないのに働くのと聞いくと彼女はこう答えた。
「尚ちゃん、それはまるで何故ピザが美味しいのかみたいな質問だよ。美味しいから美味しいんでしょう?
そこに細かく理由を付けても仕方なくないかなあ。
そう言うのは料理評論家に任せれば良いでしょう。
私達は料理評論家じゃないんだからね」
僕は、その言い方に思わず笑ったのを覚えている。
当たり前の事を当たり前にしているのだ。
彼女は、色々抱えながらも必死に生きていた。
そういう必死さも美しく見えた。
彼女と僕は、年齢は離れていたが対等の関係だった。
彼女は、勉強が出来るとかでは無くて頭の回転が非常に良かったしユーモア感覚もあった。