私たち政略結婚しました!~クールな社長と甘い生活~
震える手で、自分の名前を書いていく。
これって、現実?
私何してるの?
さっきここに来た時ですら、婚姻届けを出すなんて思ってなかったんですけど。
岩槻高陽の声が聞こえてくる。
低くてセクシーな声。
やっぱりいい声よねえ。ずっと聞いていたい。
彼は、思いっきり私に背中を向けている。
その背中がまた、均整が取れてていいのだけれど。
「ああ、もうとっくに着いてるよ。窓口の場所分かるな?あと何分で来られる?」
彼は、遠くの方を見て時間を気にしてる。
電話を切ってしばらくすると、彼の部下らしい人がもう一人こっちにやってくるのが見えた。
「悪い!遅くなって」と明るい声が聞こえる。
厳しい目で睨みつけると、足早にやって来た男に事情を説明している。
私が署名を終えた後、今度は証人に選ばれた二人もサインした。
「一応、これで終わりか」
「本籍もお二人とも新宿区にありますから、後は、窓口に提出するだけです」
最初からいた年配の秘書の方が言う。
「うむ……」
彼は、私の方をチラッと見ると、自分で窓口に持って行った。
これでいいんだな?と聞かれたみたいだった。
さっきから窓口に当たっている、指サックをした中年のおじさんに書類を出す。
年配の秘書さんに「一緒に並ばれたら」と促されて、私は彼の隣に座る。
座ってる黒の腕カバーに指サックをしたおじさんは、おかけ下さいと言って用紙を受け取った。
書き間違いや印鑑忘れのチェックを念入りにした。
最後に指でさしての確認も怠らなかった。
用紙持ち去って、破り捨てるなら今だ。
ちらっと、後ろの男性二人に目が行く。
「問題ありませんよ」と窓口のおじさんが言った。