私たち政略結婚しました!~クールな社長と甘い生活~
彼は証人二人と、何やら真剣に話し合っている。
声が聞こえるところまで、近づくのは無理そうな感じ。
何かトラブルでもあったのだろうか?
どうかしたんですか?と私が聞いたところで、彼が正直に答えてくれるはずないだろう。
まあ、私の知ったことじゃないけど。
難しい顔して部下と話してる横顔を見ると、結婚したことどう思ってるのかなと気になる。
高陽さん、結婚しちゃってよかったのかな。
結婚した事、チラッとでも後悔してないのかなと思う。
しかし、手続きはさっき完了してしまった。
届出された書類が受理されたから、まぎれもない。私はこの人の奥さんだ。
奥さん。人妻。
これから、奥さんって呼ばれるんだ。
どうしよう。人妻だ。
胸が熱くなる。
これからは、夫と呼ばれる人とセットで扱われて、私一人孤独で生きていくのではないのだ。
ホワンとした安心感に包まれる。
浮かれてていいのか?
彼は好き好んで私を妻にしたわけじゃない。
出来れば、こんな女との結婚なんて、やめたいと思ってるのかも。
難しい顔してるの見ると、やめたいと思ってるのかな。
思ってないのかな。
どっちなんだろう。
それに、ここで急に彼が結婚を止めたって言ったら、いったいどうなるんだろう?
止めるって事は離婚するって事?
ううっ、夫婦生活も何にもないうちに、離婚になるのか。
本当の夫婦になる前に、バツイチだ。
余計な考えが頭をかすめていく。
「私、あの岩槻グループの若きプリンスの妻だったことがあるんですのよ」って言えるんだ。
もし、やっぱりやめたって言われても、30歳で未婚ていうより、一応は結婚したてバツがついたっていう方がいい気がする。