私たち政略結婚しました!~クールな社長と甘い生活~
原田さんは、輸入雑貨店に勤める30代前半の男性社員だ。
メガネをかけて、真面目そうなサラリーマンといった感じ。
職場が輸入雑貨店だけあって商品に詳しいし、話も面白い。
いつも、カチッとしたスーツではなく、イメージに合ったファッションを着こなしている。
ちなみに、今日は、こげ茶色のジャケットに同系色のシャツを合わせている。今日も素敵だ。
少し前に、小鳥のような可愛い奥様を見せつけられるまでは、私の妄想の中の夫候補だったのに。
「杉原さん、もう大丈夫なんですか?風邪ひいてたんですって?さっき美羽さんに聞きました」
「ええ、思いのほか薬が良く聞きましたので、この通り、もう大丈夫です」
私は、苦笑いしてファイルの中から資料を取り出す。
自然にため息が漏れる。
何だっけ。書類に書かれたメモが全然頭に入ってこない。
書類を見ていると、先週打ち合わせしていた時のことが、はるか遠くのことに思える。
「えっと、あの件ってどうなりましたか?」
「ん?」あの件?
原田さんに言われてることが、私生活じゃなくて仕事のことだったと思い出して、顔を赤らめる。
ちょっと、なに赤くなってんのよ。しっかりしなきゃ。
私は、ほっぺたをピシャと叩いて自分に喝を入れる。
原田さんが同情的な目で、私を見てる。
「杉原さんが言ってた通りで、問題なかったみたいだけど。社内的にはちょっとだけ修正が入っちゃって、すみませんでした」彼はため息をつく。
「いえ、そんな。原田さんのせいじゃないですから。大した修正じゃなかったんです。それに、修正もすでに終わってますよ」
見ていたファイルを閉じて、作成したでも画面を見せる。
原田さんは、じっくり画面を確認するとゆっく頷いた。