私たち政略結婚しました!~クールな社長と甘い生活~
オフィスを出て、エレベーターの中で携帯のメールをチェックする。

とにかく疲れた。精神的に。

早速弟から、返信あり。

文面を見て噴出した。

『寝言は寝て言え』だそうだ。

姉が結婚した事、冗談だと思ってるんだろうな。

まあそうだろうな。

説明もなくいきなり送り付けても、理解できるわけない。

そのうち会ってきちんと説明しよう。

電話で話せる内容じゃないもの。


美歩からは、電話が何度かかかって来ていた。

かけなおして会う約束しよう。

私はすぐにでも美歩に会って、精神的なバランスをとる必要がある。

とにかく、誰かにバカって叱ってもらいたい。

ダイヤルしようとした時、電話が鳴った。

かけて来たのは美歩ではなかった

知らない番号。

「もしもし」

ーー俺だ。今どこにいる?

「俺?」

ーー君の夫だ。

「えっと、会社を出たことですけど……」出るんじゃなかった。

私は、自分が歩いている辺りを見回す。

巨大なビル群から、吐き出されるように駅に向かって人の流れが出来ている。

私もその中の一人になって歩いていた。

ーー新宿だな?

「はい」

ーーそれなら、Sビルのところで待っててくれ。

「待っててくれ?」

ーーこれから迎えに行くから。

「ちょっと、どこに行くの?」

勘弁して欲しい。もう、勝手に呼び出すなって叫んだけど。

返事はなかった。

高陽さんは、既に電話を切っていた。

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