私たち政略結婚しました!~クールな社長と甘い生活~
美味しいなんて、喜んでいていいの?
やっぱり彼にほだされてないだろうか?
あったかい鍋なんか食べて、こんなに、ほこりしていていいのか?私。
そうじゃないでしょう?
何か……忘れてませんか?
ほだされてる。イケメンだからって、これは、男に対して甘くはないだろうか?
というより、食べ物につられて、誤魔化されてないだろうか?
お腹が満たされて、いい男にお酒のお酌までしてもらって。
さっき、この男がしたことを忘れたの?
そうよ。横暴な暴力で私を押さえつけたのよ。
私を畳に押さえつけて、智也との間を疑ってシャツをひん剥いたのだ。
何も見つからなかったから、機嫌でも取ろうと思ってるのね?
そうは行くもんですか。
私は、そんなに簡単に、ほだされて言いなりになる女じゃないのよ。
鍋は、美味しくてお腹いっぱい食べちゃったけど。
気持だけは、そんなに簡単に手に入れられると思ったら、大間違いなんだから。
「奈央……言わなきゃいけない事があるんだ」
ほうら、来た。
何でもいいわ、言ってごらんなさいよ。
私は、かしこまって姿勢を正した。
「言わなきゃいけない事って?」
高陽さんも、居住まいを正してしゃんと背筋を伸ばした。
何だ?
実は、愛人がいますとか?
「言いにくいことなんだか……」言葉を濁す彼。
「どんなことなの?もしかして、女の人?」
彼は、首をぶるっと降って違うっていった。
「でも、女の人には違いないか。七十過ぎてるおばあさんだけど。
えっと……明日から、家政婦が来る。
ずっとこの家で働いてきたから、断り切れなくて。だから、驚かないでほしい」
高陽さんがごめんと言って、深々と頭を下げている。
「どういう事でしょうか?」