「Love logic」だから僕は、誰も好きにはならない。
デスクの横に立って、
「桐生さん、ここ教えてもらえませんか?」
鼻にかかるような声で言って、長い爪の先で書類を指差すのに、顔を見上げる。
初めて見る顔だとも思いながら、
書類を眺めて、
「ここは、こうすればいい」
スーツの胸ポケットからペンを抜いて、アドバイスを書き出す。
「…ああ、そうなんですねぇ…よくわかりましたー」
間延びした言い方で、チラリと横目に見てくる。
誘っているのは、わかっている。
わかっているが、応えたくもなくて、見ないふりでネクタイを直そうとする。
「……ネクタイが曲がってるの、直してあげましょうか?」
そこに手が伸びて、ネクタイが締め直されて、
「あっ……」
と、見ていた女性社員から、小さく声が上がる。
それに男性社員が反応をして、チッと舌打ちをする。