それはバーの片隅で
私は慌てて服を掴んだ。
「待って起きて、寝ないで説明してください」
「えー……?そんな慌てなくても…なんもしてないし……」
掴まれた服の裾をちょんと払いながら修司はまた欠伸をする。
心底眠そうにしながらもベッドに入り直すのはやめてくれたようで、ふあぁと欠伸をくり返しながら身体を起こした。のんびりとあぐらをかき、私を指さす。
「ほらちゃんと確認して?服、着てるでしょ?」
「いえ、あの」
「あ……でも首もと苦しそうだったし、ボタンは少し開けさせてもらったよ」
(それも大事だけど!)
「そういうことじゃなくて」
食い下がる私を、欠伸をやめた修司はまだ半分しか開かないような目で見つめてきた。
「あー……ここはバーの2階。俺が借りて住んでる。あんたはいきなりぶっ倒れて起きない。家もわからない。だから泊めた。ほかに質問は?」
「……バーの…2階…?」
「そ。ゆうべのマスター覚えてる?あれ、俺の叔父さん。で、借りてる」
(おじさん……どうりで親しそうだと)
「そう…だったんですか」
「それで?」
「それで?って」
「俺に言うこと、ないの?」
修司の声に顔を上げた。
相変わらず眠そうな顔をしているけど、何というか、こう……腹立たしい表情をしている。
薄く笑っているというか、とにかくそういう顔だ。