それはバーの片隅で
性格の問題なのか、こういう風に促されるとイラッとしてしまうのは私の悪い癖なのかもしれない。
昨晩は確かに途中でぷっつり記憶が途切れている。迷惑をかけたのは事実だ。
正体のない人間を運ぶのは重いってよく聞くし、いくら同じ建物と言っても1度地下から出て上階へ上がってくるのは大変だったはず。
「……た、たいへんご迷惑をおかけしました……」
結果、喉の奥からしぼりだすように素直な言葉を出した。
修司は頷きながら、唇の端を上げて意地悪く笑う。
「うん。酔っぱらいって重いんだよねー、すごくね!……それだけ?」
「……わざわざ運んでいただきありがとうございました」
「はいよくできました」
俯いてしまった状態で、頭の上から満足そうに笑った修司の声が降ってくる。
飲み潰れた女を自分の部屋に運び入れ、何も――改めて服装を確認する――何もせずにベッドで寝かせてくれた。ものすごく親切な対応だ。
だけど、どうしても修司の態度が勘にさわるというか。
「……プッ」
「なに笑ってるんですか」
「だって顔に全部出てるから」
しかもそれを本人に見透かされる。
みっともないやら情けないやらで、この場から消えたくなってきた。
「……お世話になりました。帰ります」
「まぁまぁ。朝メシ食おう?」
「え」
「下。行こっか」