それはバーの片隅で

*****

「ただいま……」

 バッグをテーブルに放りなげて、ベッドに突っぷす。
 あれから逃げるように店から帰ってきてしまった。

「だって!なんだったのアレ!!」

(ほっぺにさわられた感じとか、目とか、頭から全然はなれてくれない……!)

 いつもなら絶対部屋着以外でベッドに乗ることなんてないのに、今夜はだめだった。
 さっきまでのことを思い出してはバタ足をしてもだえる。

(恋愛から軽く3年以上遠ざかってるせいなの!?)
(どんだけなの、私!?)

 ―――ピリリリリッピリリリリッ

「あっはいはい」

 テーブルからはみ出た携帯が鳴り、ベッドから転がりおりる。
 反射的に手を伸ばして相手も確認しないままボタンを押した。

「はーいなんでしょー?」
『もしもーし?すぐ帰るなんてひどいと思いまーす』
「はっ!?」

 耳から携帯を離す。
 液晶画面には、登録されてない番号。

(だけどわかるに決まってる)

「ちょっ…篠原くん!?」
『そうですよ。ほかに誰がいるんですか』
「誰がって、だって、なんで番号、っていうか」
『だいぶ混乱してますね』

 あはは、という笑い声が聴こえてカッとなった。

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