それはバーの片隅で
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「ただいま……」
バッグをテーブルに放りなげて、ベッドに突っぷす。
あれから逃げるように店から帰ってきてしまった。
「だって!なんだったのアレ!!」
(ほっぺにさわられた感じとか、目とか、頭から全然はなれてくれない……!)
いつもなら絶対部屋着以外でベッドに乗ることなんてないのに、今夜はだめだった。
さっきまでのことを思い出してはバタ足をしてもだえる。
(恋愛から軽く3年以上遠ざかってるせいなの!?)
(どんだけなの、私!?)
―――ピリリリリッピリリリリッ
「あっはいはい」
テーブルからはみ出た携帯が鳴り、ベッドから転がりおりる。
反射的に手を伸ばして相手も確認しないままボタンを押した。
「はーいなんでしょー?」
『もしもーし?すぐ帰るなんてひどいと思いまーす』
「はっ!?」
耳から携帯を離す。
液晶画面には、登録されてない番号。
(だけどわかるに決まってる)
「ちょっ…篠原くん!?」
『そうですよ。ほかに誰がいるんですか』
「誰がって、だって、なんで番号、っていうか」
『だいぶ混乱してますね』
あはは、という笑い声が聴こえてカッとなった。