それはバーの片隅で

 毎日毎日、会社とマンションの往復。
 ときどき寄り道するけど、最近はそんなことも減っている。
 当たり前になってた毎日に疲れなんて考えもなくしてた。
 どんなに嫌な事があったって、仕事だってわりきってきた。これはお金だって思って、心を殺すことだって普通にある。

(……でもさすがに今日は、疲れたかも…)

 私はトートバッグを肩に掛け直し、ため息をついた。

 金曜日の夜ともなれば駅前はいつもよりさらに賑やかだ。
 そこから離れられたことにホッとしながらも、さっきまでのやりとりが頭から離れてくれずに気分が悪い。

(接待ってもともと大嫌いだけど、お酒が入るとホントイヤ)

 立ち止まり、見えなくなったタクシーに乗っている上司に心の中で舌打ちする。
 普段はそこまでムカつかないけど、お得意様の接待でお酒が入ると気が大きくなるのか態度も大きい。
 笑顔でかわしている私も悪いんだろうけど、後輩の女の子にあれをやった時は思わずむこうずねを軽く蹴飛ばしてしまった。

(あー早く忘れよ。いいお店見つけよう)

 実はひとりで飲むのは初めてだ。
 期待と少しの緊張から早足になり、繁華街から離れていった。


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