あの夏の空に掌をかざして
 ……これは、あの夢?


 今回の夢は、いつもと勝手が違っていた。


 目の前にはいつものように、あの公園で遊ぶ昔のあたしと男の子……ではなく、男の子があたしを助けた後の、商店街だった。


 そこで、昔のあたしと男の子は手を繋いで歩いている。


 あたしは腫れた足を抑えてうずくまり、男の子はーーーーー。


「……なんか、いつもと違う」


 昔のあたしを移動させようとも、大人たちを呼んでこようともせず、ただじっと、昔のあたしを見つめていた。


 その足は震えていて、顔はモヤで隠れているのに、どこか強ばっていて、冷や汗が垂れているのが分かった。


 息が荒い……息苦しそう…どうしたんだろ……。


『そうだ……こうすればいいんだ…こうすれば……』


 男の子の、そんな声が聞こえる。小さくて聞きづらかったけど、小さい子特有の甲高い声は、ちゃんとあたしの耳に届いていた。


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