あの夏の空に掌をかざして
 そして、あたしは6時に起きて、寝れなくなってしまったので、宿題をすることにした。


 終わらないと、一緒に出掛けないとか言い出しそうだもんね、日向は。


 そう言う日向と、言いくるめられるあたしが容易に想像できて、笑ってしまう。けれど、それはほんとに起こりうる事なので、日向との約束の時間まで、あたしは出来る限り宿題を終わらせたのだった。



***



 日向との約束の時間、10時まであと30分。あたしは来ていく服を迷っていた。なんてったって、好きな人をデートに誘いにいくのだ。


「ていっても、あたしはあんま可愛いの持ってないしなあ」


 クローゼットとタンスの前をうろうろしながら、時折全身鏡の前に立って服を合わせたりしていた。あたしは主に部着しか着ないし、おしゃれをして出掛けるようなこともあまりないので、そういった類の服を持っていなかった。


「う~ん、これはあんまりだし、これも……」


「なにしてんの?もう約束の時間20分過ぎてるんだけど?」


 背後から突然声がしたので、あたしは驚いて持っていた衣類を抱き締めながら、鼓膜がはち切れんばかりの大声で叫んでしまった。


「び、びっくりしたぁ!もう、勝手に入ってこないで!」


 後ろを見ると、シンプルな白色の半袖にジーンズ姿の、ラフな格好をした日向が、あたしの部屋のドアに手を組んで寄りかかっていた。


「あはは!ごめんごめん、驚かせるつもりはなかったんだけどね」


「も、も~!」


 シンプルでどこにでもいそうな格好でも、日向は着こなしててすごいなあ。……かっこいい。


 ドクンドクンと、まだうるさい心臓を落ち着かせるように、あたしは深呼吸をした。


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