あの夏の空に掌をかざして
 ……あの男の子、自分でーーーーーーー。


 あの場面を思い出すだけであたしは、心臓が早鐘を打つのを感じた。


 目の前は、もう自分の部屋なのに、飛び散った赤い血の残像が、緑色になって、あたしの部屋にこびりついているように見えた。


「っう……」


 久しぶりに思い出して吐き気がして、片手で口元を押さえる。


 立っているだけでめまいがして、座り込んだ。


「……はぁ、はぁ……んで、あの男の子は……?」


 吐き気が治まると、ベッドの側面に背中を預けて、天を仰ぐ。


 そう呟いた疑問は、けれど確信しているような響きを持って、あたしの耳に届いた。


 ……わかってる、あの男の子は、それくらい、追い詰められていて、それくらい、あたしが大事だったんだってこと。


「……君は…だれ?」


 目の前に居るはずのない男の子にそう問いかけて、あたしは目を閉じた。
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