あの夏の空に掌をかざして

 「……ん」


 体が浮いていたような感覚を過ぎると、意識が浮上するのを感じた。


 体があったかくて、もう少し眠っていたかったけど、"もう起きないといけない"、具体的には言えない、あたしの何かがそう訴えていた。


 ゆっくりと目を覚ますと、まだ意識ははっきりしていなかったが、そこはすっかり見慣れた、あたしの部屋のベッドだと分かった。


「ぁれ…?……たし、なんで寝て……?」


 絞り出した声は掠れていて、あたしの耳にも聴こえにくいほどだった。


 寝起きの口の中は、不快で気持ちが悪かった。


 うがいをしに洗面所に行くために、ベッドを降りようとしたとき、左手が温かくて柔らかい何かに握られていることに気づいた。


「……日向?」


 寝ぼけ眼をこすり左を向くと、あたしの左手を握りしめながら、日向が床で、ベッドに寄りかかりながら眠っていた。


 え!なんで手握ってるの!?


 隣に日向が眠っていることに混乱したが、落ち着いて冷静になると、状況を理解することができた。
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