あの夏の空に掌をかざして
「ねぇ、日向」


「ん?」


 暫くテレビを見ていたが、あたしは唐突に、日向に切り出した。


「もし、もうすぐであたしと一生離ればなれになって、連絡することもできなくなるんなら、…日向ならどうする?」


 このとき、どうして聞いてしまったのか、あたしには分からなかった。


 あたしが弱くて限界だったからなのか、はたまたヒントが欲しかったからなのか。


 多分、そのどちらでもあるんだと思うけど。


 日向は、いきなり言い出したあたしを、不思議そうにするわけでもなく、少しの間考えてから、口を開いた。


「うーん、僕なら、最後まで楽しもうとするかな」


「楽しむ?」


 あたしが、怪訝そうにそう訊くと、日向は「うん」、と言って、理由を話始めた。


「だって、もう会えないんでしょ?なら、せめて笑ってお別れができるように、最期まで悔いを残さないために、楽しみたいじゃない?」


 そう言って、優しく微笑んだ。
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