あの夏の空に掌をかざして


「あの、一緒に回りませんかぁ?」


 石畳の道を歩いていると、後ろから語尾の伸びた甘ったるい声がして、あたし達は振り返った。


 そこには、大学生くらいのキレイな女の人が二人いた。


 多分、声をかけてきたのはこの二人だろう。


 もちろん、日向に。


「妹さん?もご一緒に、私たちと回りませんか~?」


 二人組の片方が、再度訊いてきた。


 "妹さん"。それは、あたしが日向と、恋人としては見られていないということだ。


 身長が高くて、大人っぽい雰囲気の日向と、低身長で子供っぽいあたし。


 どう見られるかなんて、一目瞭然だ。


 ……やだな、日向がモテるのは、分かってることなのに。


 ぎゅうっと、静かに自分の服の裾を握る。


 周りをよく見ると、日向に見惚れている人がいっぱいいる。


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