あの夏の空に掌をかざして
 伸ばされた手は、あたしの頭を優しく撫でた。


 日向は、満円の笑みを浮かべていた。


「日向…」


 何だか、日向の優しさに、涙が出そうだった。


 そして、今までの自分の行いが、恥ずかしいもののように思えた。


 日向は、忘れてしまっていることもあるけど。


「ごめんね……ありがとう」


 あたしは、そう伝えることしか出来なかった。


 どんな言葉でも、今のあたしの気持ちは伝えきれないような気がしたから。


「ん」


 日向はそう言うだけで、暫くあたしの頭を撫でていた。
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