あの夏の空に掌をかざして
 そこは、何度目か、もう分からないくらいたくさん見た闇の中。


 あぁ、日向は今回も死んだのか。


 それは、あたしにそう、現実を突きつける夢でもあった。


 だけど、あたしの感覚はもう麻痺していて、そう思っただけで、我ながら薄情だなと思った。


 暫くして光に包まれた先は、あの夢の光景に繋がっていて、あたしはそれをぼうっと見つめていた。


 けれど、そこは、いつもの夢とは違っていた。


「男の子の…顔が……」


 モヤが、取れていたのだった。


 横顔ではよく見えなくて、でもあたしは動けないから、焦れったい思いを抑えて、目を細めながら慎重に見つめる。


 顔がわかったら、何かのヒントになるかもしれない!


 そんな期待を胸に秘めながら。


 そして幼いあたし、もとい女の子は、出口に向かって走り出す。


 そこを男の子がついて走る。
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