あの夏の空に掌をかざして
 下を見ていたら、涙が溢れてきそうだったから。


『何だか、そんなに素直になられちゃったら、あかりが小さかった頃を思い出すわね』


 そんなことを、しみじみ言った。


『あんたったら、本当に小さくて、可愛くてねぇ』


 お母さんは、昔を思い出してふふ、と笑った。


『ああそうだ、明日、日向くんと隣町に行くんでしょう?』


「うん、そうだよ」


 日向に訊いたのだろうか、お母さんはからかうような口調だった。


 それもこれも、あたしが昔から日向に恋心を抱いていたことを近くで見ていたからだろう。


『懐かしいわね、昔、浜崎さん達とも一緒にお出掛けに行ったわよね』


「……え?」


 あたしに、そんな記憶ない。


 それくらい、幼い頃だったのだろうか。


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