あの夏の空に掌をかざして
『もしもし?もしもし?あかり』


 そんなお母さんの声が聞こえたけど、いつのまにかそれも聞こえなくなって、あたしは考えを巡らせていた。


 あたしは、確かに日向と6歳のころ、10年前にあの町に行っていた。


 そこで、あたしが事故に遭って、日向がループすることになったと考えられる。


 あたしと日向が今、生きていることを考えると、日向はあたしを助けることに成功したことになる。


 そこで、問題がある。


「なんで…あたしは覚えてないの?」


 そう、日向が成功したと言うことは、あたしが覚えていてもいいのだ。


 なのに、あたしは欠片も覚えていない。


「どういう事なの…?」


 あたし以外誰も居ない室内に、そんな声が響いた。
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