あの夏の空に掌をかざして
【299回目】
 明日は、あたしの運命の日になる。

 あたしは、最期まで、楽しんでいきたいと思う。日向が言ってくれたみたいに。

 本当は怖い。死にたくない。消えたくない。日向と、ずっと一緒にいたい。

 でも、もしこれが最後だとしても、後悔だけはしたくないから。


 それで、今日は、日向の家で、ずっと一緒にいた。

 珍しく弱っているあたしを見て、日向は気を使ってくれたんだろーな。

 申し訳ないな。だけど、日向と、ずっとくっつけて、嬉しかった。

 あたしが抱き付いたら、驚いてたけど、抱き締め返してくれて。

 「怖い夢見たの?」とか、「よしよし、大丈夫大丈夫」って、背中を優しく撫でてくれて、安心して、また泣いた。

 日向は気づいてないふりして、座ったら日向の体にすっぽり収まるあたしを、ずっと抱き締めてくれてた。

 それが嬉しくて、だけど、悲しくて、あたしは、何にも出来なかった。

 明日が、怖い。
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