あの夏の空に掌をかざして
 一抹の不安が、あたしの胸に広がって、あたしを侵していく。


「ふぅーーーー……。大丈夫、まだ、終わってない」


 深呼吸をして、未だに早鐘を打ち付ける心臓を落ち着かせる。


 諦めたくなかった。絶対絶望な状況だとしても、せめて最期まで抗っていたかった。


 まだ、希望がないわけじゃない。


「あの、男の子のことが分かれば、まだ……」


 その先の言葉は、あたしの口からは出てこなかった。


 否、出さなかった。


「大丈夫、大丈夫、大丈夫」


 そして、午前10時丁度、あたしの家のインターホンが、鳴った。
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