あの夏の空に掌をかざして
「陽ちゃん!」


 陽ちゃんを呼ぶと、陽ちゃんは駆け出してきて、あたしに飛び付いた。


 あたしは、勢いが余って転んでしまった。


 顔中をペロペロと舐められて、犬特有のハッ、ハッ、という息がよく聴こえる。


「あはは!くすぐったいよ~」


 それに応えるように、陽ちゃんの顔を撫でまわす。


「あかりちゃん、どうしたのいきなり?」


 背後からそんな日向の声が聞こえた。


 ハッとして、陽ちゃんを撫でていた手を留め、顔だけ後ろに振り向く。


 陽ちゃんはもっと撫でてほしいのか、自分からあたしの手に、体を擦り付けていた。


「ごめ~ん!陽ちゃんに会いたくなっちゃって!」


 軽く日向に謝る。日向は肩をすくめて呆れたような素振りをして見せたけど、特に何も言わなかった。


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