あの夏の空に掌をかざして



 あたし達が来たのは、このループが始まった、あの隣町の水族館だった。


 "何かヒントがあるかもしれない"、っていう気持ちもあったけど、それよりも、"ここで終わらせたい"、という気持ちの方が大きかった。


 さよならは、これまでで終わらせてきた。大丈夫だ。


「水族館、楽しみだね」


 夏休み最後の日ともあって、水族館のチケット売り場の行列に並んでいるとき、日向があたしを向いて言った。


「ね!日向は、どんな魚が好き?」


「そうだなぁ」


 そんな話をしていると、行列なんかあっという間だ。


 日向と会話をしていると、時間が過ぎるのも早いから。


 そしてチケットを買ったあと、あたしたちは最初のクラゲコーナーに赴いた。


「わぁ、きれい」


 あたしが目に止まったのは、暗い部屋の水槽だった。


 下から、あまり刺激のないブルーライトが当たっていて、クラゲを幻想的に映し出している。


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