あの夏の空に掌をかざして
「ひ、日向!甲羅にハート型がある海ガメいるんだって!あたし、それが見たい!」


 文章を読んだあたしは、急いで日向に振り返り、そう言った。


「ハート?珍しいね。じゃあ、一緒に探そっか」


 日向は快く受け入れてくれ、ふわりと笑った。


 …本当は、あのジンクスを試してみたいだけだけど。


 なんて、言えるはずもなく、あたしは日向と一緒に、水槽の隅々まで探す。


 根拠がなくても、それでも、"永遠"が欲しかった。


 それだけで、この運命も、変えられるような気がしたから。


 水槽を見上げる日向の横顔を見つめながら、あたしはそんなことを思った。


 日向と、ずっと一緒にいたい。


 それだけが、あたしの願いだから。
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