あの夏の空に掌をかざして

「あ、あかりちゃん!あれじゃない?」


 そんな日向の声が聞こえたのは、探しはじめて五分ほどたった時だった。


 日向の指差す方向を見てみると、海ガメが優雅に泳いでいた。


 目をよく凝らすと、薄いが、確かに甲羅の中心に、綺麗な線対象のハート型があった。


「あれだ!すごい!ハート型!!」


 あたしだって女子だ。可愛いものに目がない。ハート型だって。


 興奮して、あたしは跳び跳ねて喜ぶ。


 声を弾ませながら日向の方に向くと、日向は優しい笑顔をあたしに向けていた。


「うん、そうだね」


 ニコニコ笑っている。


 あたしを、子供として見ている笑顔。


 けれど、今はそんな笑顔も愛しいものになった。


「ねぇ、日向」


 日向は、ん?と言うような顔を、あたしに向ける。


「甲羅にハートがある海ガメと、男女が出逢うと、その男女は永遠に一緒にいられるんだって」
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