あの夏の空に掌をかざして
「イルカショーすごかったね」
「ね!すごい濡れちゃった~」
イルカショーは初めてだったから、あたしの興奮も最高だった。
モヤモヤしていた気持ちも、すっとんでいった。
そしてイルカショーの後、あたし達は水族館内のお土産店に来ていた。
魚のぬいぐるみとか、文具とか、お菓子とか。ここでしか買えない品がたくさんあって、どれにしようか迷ってしまう。
あ…、日向の、匂い。
ふわり、と香る、日向の香り。
イルカショーの後、あたしだけすごく濡れちゃって、服も透けちゃったから、日向が上着を貸してくれたのだ。
だから、不意に香る日向の香りに、まるで日向に抱き締めてもらってるような錯覚に陥ってしまう。
あたしの腕より長い袖が、だぼだぼの上着が、あたしと日向の"体格の差"を知らしめている。
日向も、男の子なんだ。
「ひな、た…」