あの夏の空に掌をかざして

正体

 クッキーを買って、あたし達は水族館から出た。


「ここらへんに、美味しい定食屋さんがあるんだって」


 …あれ、おかしいな。なんか、体が…熱い。


 夏の"暑い"とか、熱の"熱い"とかじゃない、熱さ。


 歩き出して五分ほど、あたしは体の異変を感じていた。


 心なしか頭も痛くて、足もふらふらしている。


 日向の声が聞こえるけど、何を言っているのかが理解できない。


「あかりちゃん?」


 返事をしないあたしを覗きこむ、日向の顔。


 日向…だ。へんじ、しなくちゃ…………。


 だけどそんな気持ちに反して、あたしは倒れ込み、意識を無くした。


 意識をなくす寸前、どこかで見た光に包まれた気がした。
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